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渦電流

渦電流が発生する仕組み

金属などの導体の中の磁束が変化すると、渦電流という電流が発生します。渦電流が発生する仕組みを考えてみます。
図1

図1のように、金属製の円板の上に磁石を配置して円板を回転させると、円板の磁石が近づいてくる部分は磁石による磁束が増加するのを妨げるように磁束を発生させようと、円板に渦電流が流れます。
一方、円板の磁石が離れていく部分は磁石のよる磁束が減少するのを妨げるように磁束を発生させようと、円板に渦電流が流れます。

固定された金属板とコイルによる渦電流

金属板の上方に、金属板と垂直にコイルを置いた場合を考えます。
図2

コイルに電流
i=√2Isinωt
の電流を流すと、発生する磁束は電流に比例するため、
φ=B(t)S
 =√2BSsinωt
の磁束を発生します。
この磁束は時間の経過と共に変化しているため、磁束が鎖交する金属板にはファラデーの法則より、
e=-dφ/dt
=-d/dt √2BSsinωt
=-√2BS d/dt sinωt
=-√2BSωcosωt
の電圧が発生します。
この電圧によって金属板には電流が流れ、この電流はレンツの法則のとおり、鎖交する磁束の変化を妨げる方向に磁束を作るような方向に流れます。つまり、金属板の磁束が鎖交する位置を中心として同心円状に回る電流が流れます。
金属板の上面から下面に磁束が通過しているとき、金属板の上から見ると反時計回りの方向に同心円状に電流が流れることになります。これが渦電流です。
e==-√2BSωcosωt
という式より電圧eはωに比例することが分かります。ωはfを周波数とすると、
ω=2πf
で表されますので、周波数が高くなると電圧も高くなることがわかります。
電圧が高くなると、渦電流の電流値も大きくなります。
コイルが直流で励磁されている場合は、磁界が変化しないため金属板には電圧が誘起されず、渦電流も流れません。しかし、コイルが直流で励磁されている場合でも、コイルを横に動かしたり、近づけたり遠ざけたりすると、金属板の磁束が変化するため、電圧が誘起され渦電流が流れます。

渦電流損

渦電流が発生すると、
P=I2R
の電力が生じ、この電力によってジュール熱が発生します。このジュール熱は損失となる場合がほとんどです。この損失を渦電流損といいます。
変圧器の鉄心は渦電流による損失を減らすため、図3のように、薄い鋼板の表面を絶縁処理し何枚も重ねて作られます。
図3

渦電流の活用

電磁ブレーキ

渦電流を活用したものに電磁ブレーキというものがあります。
図4は電磁ブレーキのしくみです。
図4

図4のように、回転する金属製の円板の上に磁石を近づけると、円板の磁石が近づいてくる部分は磁石による磁束が増加するのを妨げるように磁束を発生させようと、円板に渦電流が流れます。
一方、円板の磁石が離れていく部分は磁石のよる磁束が減少するのを妨げるように磁束を発生させようと、円板に渦電流が流れます。
この渦電流から発生する磁束と、磁石から発生している磁束の間で反発力・吸引力が働くことで、回転する円板にブレーキがかかります。円板の運動エネルギーは円板に発生した渦電流によりジュール熱に変換されます。
電磁ブレーキは、通常のブレーキのように摩擦する部分がないため、部品の摩耗が発生しないというメリットがあります。

渦電流で 回るアラゴの円板

図5はアラゴの円板のしくみです。
図5

図5のように、金属製の円板の上で磁石を移動すると、円板に渦電流が流れます。
この渦電流から発生する磁束と、磁石から発生している磁束の間で反発力・吸引力が働くことで、回転する円板に回転力が発生し円板が回転します。
このアラゴの円板の原理は、誘導型電力量計や誘導電動機が回転する原理に活用されています。

IHクッキングヒーター

図6はIHクッキングヒーターの図です。
図6

IHはインダクションヒーティングの略で、日本語に訳すと電磁誘導加熱になります。IHクッキングヒーターの内部にはコイルが内蔵されており、そのコイルが発生する磁束が鍋を通ります。すると、磁束によって鍋自体に渦電流が流れ、ジュール熱が発生して鍋が発熱します。


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