トリー現象とは、架橋ポリエチレン絶縁ビニール外装ケーブル(CVケーブル)の絶縁劣化原因の1つです。
図1は高圧で使用されるCVケーブルの構造です。
図1
CVケーブルの絶縁層である架橋ポリエチレンの中を、樹枝状に細い管が伸びていく劣化現象で、管が絶縁層を貫通すると絶縁破壊となります。建物の引き込みケーブルで発生した場合は、電力会社や他の需要家へも影響する波及事故になる場合があります。トリー現象は、電気トリー、水トリー、化学トリーの3種類があります。
高圧のCVケーブルは、絶縁層である架橋ポリエチレンの外面と内面に半導電層という層を設けています。これは絶縁層にかかる電気的なストレスを緩和するために設けるもので、半導電性能を持つテープを絶縁層の内面と外面にまくことで半導電層としています。
この半導電テープの毛羽立ちや、ケーブル製造時に絶縁層の中に侵入した異物やボイド(空隙)などがあると、その部分に電界が集中し部分放電現象が発生します。
部分放電現象は、架橋ポリエチレンの誘電率は2程度なのに対し、異物やボイド部分は2より小さな誘電率であるため、異物やボイド部分に局所的に電界が集中することによって、部分的な放電が起きるものです。
部分放電した部分の架橋ポリエチレンには小さなくぼみがあき、また部分放電が発生してくぼみを進行させていくということが繰り返され、最終的には絶縁層を貫通して絶縁破壊となります。
電気トリーは、絶縁層の架橋ポリエチレンで発生する部分放電現象によって、樹枝状の空隙が絶縁層の中を進行していく現象ですが、水トリーは非常に小さな水滴が絶縁層の中を樹枝状に進行していく現象です。
絶縁層の内外面や絶縁層の中に混入した水分と、絶縁層の中の異物やボイドの間に局所的な電界の集中が発生し、水分が進展していきます。電気トリーに比べると弱い電界でも発生します。
絶縁層の外面から発生する水トリーを外導水トリー、内面から発生する水トリーを内導水トリー、絶縁層の中の水分が蝶ネクタイに似た形状に進展していく水トリーをボウタイ水トリーといいます。
化学トリーとは、絶縁層の中に薬品や油などが浸透し、導体の銅と反応して異物を発生し、その異物が架橋ポリエチレンの中を樹枝状に刺し込んでいく現象です。導体の銅と反応してできた異物は金属であるため、絶縁層を貫通すると大きな絶縁破壊が生じます。
化学トリーは電気トリーや水トリーと異なり、電界の影響で発生するものではないので、通電していなくても発生するトリー現象になります。