電磁開閉器(マグネットスイッチ)とは、電磁接触器(マグネットコンタクタ)とサーマルリレーを組み合わせたものです。主に、モーター等の負荷の電源ラインに設置され、負荷をオンオフするために用います。
電磁接触器は、電磁石の力で接点を開閉する機器です。コンタクタともいいます。サーマルリレーは、熱を利用した保護継電器です。この2つを組み合わせることによって、負荷のON・OFFと、負荷に過電流が流れ焼損することを防止することができます。
図1
図1は電磁開閉器の構成です。
発停スイッチをONにすると、電磁接触器内の電磁石が接点を引き付け、主回路接点と補助接点をONします。
主接点がONになると負荷電流が流れます。負荷電流が流れることによってサーマルリレー内のヒーターはバイメタルを加熱します。
図2
図2はバイメタルの構造です。熱膨張率の異なる2つの金属を接合し、加熱されることで湾曲するようにしたものです。
図3
図3は負荷に過電流が流れたため、バイメタルの湾曲が大きくなり、電磁接触器がOFFになった図です。
このように、サーマルリレーは負荷電流が過大になると自動的に電磁接触器をOFFにします。
サーマルリレーには2素子と3素子があります。
素子とはバイメタルとヒーターのことを指していて、2素子はバイメタルとヒーターが2セット、3素子はバイメタルとヒーターが3セット取り付けられます。2素子の場合、S相はバイメタル及びヒーターを使用せずに直接接続されます。
2素子は過負荷保護のみで動作します。3素子は過負荷保護と欠相保護で動作します。
過負荷保護のみの1つの動作要素を1E、過負荷保護と欠相保護の2つの動作要素を2Eといいます。
2素子は1E、3素子は2Eとなります。(要素は英語でelementなのでEと表す。)
2素子=2Eではありませんので注意しましょう。
図4は1Eサーマルリレーの無通電時の図です。
図4 1Eサーマルリレー 無通電時
無通電時のため、バイメタルは湾曲していません。
図5は平常運転時のサーマルリレーの図です。
図5 1Eサーマルリレー 平常運転時
バイメタルの点線は無通電時の位置を表しています。平常運転時はR相とT相のヒーターにそれぞれ同じ大きさの電流が流れますので、バイメタルが2つとも同様に湾曲します。しかし正常な電流ではバイメタルの湾曲が小さいため、故障信号接点が入らず運転を継続します。
図6は3相過負荷運転時のサーマルリレーの図です。
図6 1Eサーマルリレー 3相過負荷運転時
平常運転時と比べるとバイメタルが2つとも大きく湾曲します。これにより故障信号接点が入り過負荷保護を行います。
図7はS相欠相運転時のサーマルリレーの図です。
図7 1Eサーマルリレー 欠相運転時
欠相とは、ケーブル断線やヒューズ溶断などで1相に電流が流れなくなった状態です。電動機が停止中に欠相すると、電動機が回転せず大きな電流が流れ過負荷時の状態になり、サーマルリレーが動作しますが、電動機が運転中に欠相が発生すると、電流がサーマルリレー動作値まで大きくならないものの、負荷に悪影響がある大きさの電流が流れることがあります。
図7では、S相が欠相していますが、R相とT相に流れる電流がサーマルリレー動作値に達していないため、サーマルリレーは動作していません。
そのため、欠相保護をしたい場合は2Eのサーマルリレーを使用します。
図8は2Eのサーマルリレーです。
図8 2Eのサーマルリレー 無通電時
1EはR相とT相にヒーターとバイメタルがありましたが、2EはRSTの3相ともヒーターとバイメタルがあります。
図9は平常運転時のサーマルリレーです。
図9 2Eサーマルリレー 平常運転時
図10は3相過負荷運転時の2Eのサーマルリレーです。
図10 2Eサーマルリレー 3相過負荷運転時
1Eのサーマルリレーと同様にヒーターにより加熱されたバイメタルが湾曲し、故障信号接点がONになります。
図11はS相欠相運転時の、2Eのサーマルリレーの図です。
図11 2Eサーマルリレー 欠相運転時
S相が欠相しているため、S相のバイメタルの湾曲がなく、R相とT相のバイメタルは電流が流れているためやや湾曲しています。
欠相の場合はバイメタルの湾曲が過負荷レベルに達していなくても動作させるため、図11のような3相のアンバランスを検出できる機構になっています。
遮断器(ブレーカー)は、短絡保護と過負荷保護の役目があります。遮断できる電流は定格電流の約500〜1000倍、電気的開閉耐久回数は約6000回、開閉頻度も約6回/時間となっています。
電磁開閉器は負荷の発停と過負荷保護の役目があります。遮断できる電流は定格電流の約10倍、電気的開閉耐久回数は約100万回、開閉頻度も約1200回/時間となっています。
電磁開閉器は、遮断器に比べて、頻繁な開閉に耐えられるようになっています。しかし、短絡電流のような大電流は遮断できないため、電磁開閉器の電源側には遮断器を設置する必要があります。