交流を扱う場合、ベクトル図が重宝します。
一見わかりにくいですが、覚えてしまえばこんなに便利なものはありません。
図1
図1はベクトル図(左)と交流50Hz100Vのグラフ(右)です。
0秒のときに交流100Vをかけたとすると、0秒の瞬間は0Vです。
この状態の0.005秒後は図2の様になります。
図2
同様に0.005秒後は図3の様になります。
図3
そして0.005秒後は
図4
このようにベクトル図は正弦波交流の変化を表しています。ベクトル図の矢印は反時計回りとなります。そして、矢印が1周すると1周期となります。
それでは、交流50Hz100Vにコイル(インダクタンス)を接続し、50Aが流れた場合を考えます。
図5
インダクタンスに電圧を掛け電流を流すと、電流は電圧より90°遅れます。
図6のベクトル図を見ると電流ベクトル(青)が電圧ベクトル(赤)より90°、時計まわり方向にずれています。
図6
ベクトル図は半時計まわり方向に回転しますので、この状態は
電流ベクトル(青)が電圧ベクトル(赤)より90°遅れている
と言います。
先ほどと同様、0.005秒後は図7のとおりになります。
図7
ちなみにインダクタンスの代わりにコンデンサを接続した場合は、
電流ベクトル(青)が電圧ベクトル(赤)より90°進む
ので、
ベクトル図では電流ベクトル(青)が電圧ベクトル(赤)より90°、反時計まわり方向にずれることになります。
ベクトル図は交流の電圧と電流の位相を考えるときにわかりやすいので積極的に活用しましょう。
図8
図8はベクトルAの図です。
このベクトルAの先端の点は(a,b)と表せます。そしてx軸は実数、y軸は虚数を目盛ってありますので、
複素数表示にはjという虚数単位を使用します。
数学ではiと習ったと思いますが、電気数学ではiは電流と混同されやすいため、jとしています。jはiと同じ意味です。
j=√-1ですので、すべての虚数はj(実数)という形で表すことができます。
A=√(a2+b2)
となります。
そして
θ=tan-1 b/a
となります。
図8
図8より
a=Acosθ
b=Asinθ
ですので、
と表すことができます。これを極形式といいます。
また、
cosθ+jsinθ=εjθ
という公式があります。これをオイラーの公式といいます。
よって
となります。これを指数形の極形式といいます。
図8
ベクトルAの大きさをAとすると
と表すことができます。これを極座標表示といいます。
ベクトル図は3相交流を考える際に重宝します。図9のような対称3相交流電源があったとします。
図9
各電圧をベクトル図に表示すると図10のようになります。
図10
仮に6.6kV配電線で考えると、線間電圧=6600[V]なので相電圧Eは、
E=6600/√3≒3810.5
図11
また、各相電圧の大きさは対称3相電源であるため等しいので
Ea=Eb=Ec
となります。