絶縁抵抗の測定方法は数種類ありますが、もっとも多く用いられる方法はメガーと呼ばれる絶縁抵抗計を用いた測定です。
メガーによる測定は簡単で扱いやすい上、測定器が小さいので現場での測定に向いています。メガーは本体に2本のプローブを接続して使用します。プローブは一方がワニ口クリップ、一方が棒状の金属になっていて、ワニ口クリップをアース端子、棒状のピン型プローブを被測定回路に当てて測定します。
測定方法は以下の通りです。
被測定回路は無電圧状態にしなければいけませんので、被測定回路の直上の遮断器・ブレーカーをOFFにします。その後、検電器等で無電圧を確認します。
確実にアースされているところにワニ口クリップをはさみます。アース端子が一番望ましいです。
ピン型プローブをアースされていることが予め分かっている部分に当て、メガーの測定ボタンを押し、メーターが0を指示することを確認します。これをアースチェックといいます。アースチェックは、ワニ口クリップが確実に接地端子に接続されているかを確認するために行います。一見ワニ口クリップがアース端子にきちんと接続されているように見えても、実は絶縁部分に噛んでいることがたまにあります。この場合被測定回路の絶縁抵抗が0であっても、アース端子とワニ口クリップが確実に接続されていないことにより、メーターの指示値が正常値を示してしまうので、アースチェックを行いこれを防止します。
被測定回路に当て、メガーの測定電圧を確認し、メガーの測定ボタンを押します。そしてメーターの指示値を読み取ります。
被測定回路の残留電荷を放電します。静電容量が大きい回路の場合、測定時に印加したメガーの測定電圧により電荷が残り、感電の恐れがありますので放電が必要です。最近のメガーは放電機能付きのものが多いので、この機能を利用し放電します。アース端子にワニ口クリップを接続した状態で、ピン型プローブを被測定回路に当てれば放電されます。当然、放電は測定ボタンを押さずに行います。
被測定回路は無電圧にしなければいけません。無電圧になっていることを確認してからプローブを当てましょう。
電圧切替型メガーの場合、被測定回路に接続されている機器を破壊しない測定電圧を選択しているか、確認する必要があります。特にパソコンやインバーターは、内部部品が定格電圧を超える電圧に弱いので注意が必要です。
コンデンサ、ケーブルなど静電容量の大きな電路の測定では、絶縁が正常でも静電容量を充電するため電流が流れ、測定開始直後は0Ωを指示します。
この場合は、
@メーターの指針が上昇して止まるのを待ってから読み取る。
A被測定回路が遮断器や開閉器などで分割できれば分割する。
Bメガーの測定電圧を被測定回路負荷に影響がない範囲で上げる。
C静電容量の大きい負荷を切り離し、電路・負荷を別々に測定する。
等の方法で測定します。
絶縁抵抗の下限値は電気設備技術基準で以下のように定められています。
電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 | |
300V以下 | 対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう。)が150V以下の場合 | 0.1MΩ |
その他の場合 | 0.2MΩ | |
300Vを超える | 0.4MΩ |
使用電圧とは、電路を代表する線間電圧のことで、公称電圧ともいいます。
使用電圧が300V以下に該当するのは、100V、200V、230Vがあります。
使用電圧が300Vを超えるに該当するのは400Vです。
使用電圧が300V以下の場合、さらに対地電圧が150V以下とその他に分けられます。対地電圧とは、接地されている電路であれば電線と大地の間の電圧、非接地の電路においては電線間の電圧となります。
たとえば中性点接地されている単相3線100-200V回路であれば、対地電圧は100Vですので、0.1MΩが下限値となります。
また三相3線200Vのうち、変圧器の2次側巻線がデルタでその1線が接地されている場合は対地電圧は200Vですが、変圧器の2次側巻線がスターでその中性点が接地されている場合、対地電圧は200÷√3≒115Vとなり150V以下となるので気を付ける必要があります。
図1
最近は負荷がパソコンやサーバーなどなかなか停電できない状況が多々あります。しかし、メガーは停電しないと使用できません。停電せずに絶縁抵抗を測りたい場合はクランプ型漏れ電流計を用います。
クランプ漏れ電流計で、被測定回路をクランプします。このとき、単相2線は2本、単相3線・3相3線は3本、3相4線は4本の電線をまとめてクランプします。こうすることによって被測定回路の零相電流を測定することができます。被測定回路が正常であれば零相電流は小さくなります。逆に漏電が発生していれば、漏れている電流値がメーターに指示されます。