電気設備技術基準には電路の絶縁性能の基準が定められています。
低圧電路の場合、電路の使用電圧の区分に応じて絶縁抵抗の下限値が定められています。
たとえば、低圧電路の対地電圧が150V以下の場合は0.1MΩ、150Vを超え300V以下の場合は0.2MΩ、300Vを超える場合は0.4MΩ以上となっています。
一方、高圧や特別高圧の電路の場合は、電路の最大使用電圧に応じて定められた試験電圧を印加して10分間耐えることが定められています。
これは、高圧電路を高圧の電圧で絶縁抵抗測定しても絶縁性能を正確に判定することができないことによります。たとえば、空気中で1mm離した2つの導体間の絶縁抵抗を測定すると、絶縁抵抗計は∞Ωを示します。しかし、その2つの導体間に約3000V以上の電圧を印加すると、空気は絶縁破壊し放電します。したがって、高圧や特別高圧の電路では、使用後に印加される電圧に十分耐えられる絶縁耐力があるかを確認する必要があります。
また、低圧電路の絶縁不良は、施工時に絶縁物が傷つくことによるもののほか、絶縁抵抗の低い部分に漏れ電流が流れ、漏れ電流により生じるジュール熱で絶縁抵抗をさらに低下させるというメカニズムで起こることが多くあります。
しかし、高圧電路の絶縁不良は、絶縁抵抗が低下した部分で放電することにより絶縁を破壊するため、低圧電路にくらべ急激に絶縁が破壊されることがあります。
これらの理由により、高圧電路は耐電圧試験を行うことが電気設備技術基準に定められています。
電気設備技術基準では、最大使用電圧や機器によって耐電圧試験の試験値が定められています。その一部を抜粋します。
【高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能】(省令第5条第2項)
第15条 高圧又は特別高圧の電路(第13条各号に掲げる部分、次条に規定するもの及び直流電車線を除く。)は、次の各号のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。
一 15-1表に規定する試験電圧を電路と大地との間(多心ケーブルにあっては、心線相互間及び心線と大地との間)に連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有すること。
二 電線にケーブルを使用する交流の電路においては、15-1表に規定する試験電圧の2倍の直流電圧を電路と大地との間(多心ケーブルにあっては、心線相互間及び心線と大地との間)に連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有すること。
15-1表
電路の種類 | 試験電圧 | |
最大使用電圧が7,000V以下の電路 | 交流の電路 | 最大使用電圧の1.5倍の交流電圧 |
直流の電路 | 最大使用電圧の1.5倍の直流電圧又は1倍の交流電圧 | |
最大使用電圧が7,000Vを超え、60,000V以下の電路 | 最大使用電圧が15,000V以下の中性点接地式電路 (中性線を有するものであって、その中性線に多重接地するものに限る。) |
最大使用電圧の0.92倍の電圧 |
上記以外 | 最大使用電圧の1.25倍の電圧 (10,500V未満となる場合は、10,500V) |
上記のとおり、耐電圧試験の試験電圧が定められていますが、電線にケーブルを使用する交流の電路は、15-1表に規定する試験電圧の2倍の直流電圧を電路と大地との間(多心ケーブルにあっては、心線相互間及び心線と大地との間)に連続して10分間加えることになっています。
これは、ケーブルは導体と大地の間に静電容量があり、交流電圧で試験すると試験装置や試験装置の電源に大きな容量が必要になるため、静電容量の影響が少ない直流電圧で試験することが認められているというものです。