変電所→変電所、メイン電気室→サブ電気室、電気室→分電盤のように、上位から下位に電力を送る電路で、重要な系統の場合は1系統ではなく複数の系統で接続して、電路の異常で停電が発生しにくいように対策します。これを冗長化といいます。もっともシンプルな冗長化は2重化といって、1か所に対して2系統の電源から電力をおくるものです。
図1は、電気室の変圧器→分電盤の電路が2重化されている図です。
図1
各分電盤は、赤の1系及び青の2系の2系統に接続されており、平常時は1系側の遮断器を投入して1系からのみ受電しています。たとえば、変圧器1が故障したり、電気室から分電盤までの間のケーブルで事故が発生したりして、1系からの受電ができなくなった場合は、各分電盤の遮断器を切り替えて、2系から受電を再開することができます。
図1の変圧器1を交換する工事を行う場合は、各分電盤を1系受電から2系受電に切り替えて、1系を停電することで施工できますが、各分電盤の負荷は工事開始時に1回、工事終了後に1回、計2回の短時間停電が発生することになります。2重化されている系統は重要な負荷が多く、できるだけ停電は避けたいので、その場合はオーバーラップ切替という切り替えを行う場合があります。
分電盤の受電系統を1系受電から2系受電に切り替える場合は、
1系受電遮断器を開放→(停電)→2系受電遮断器を投入
と操作します。
図2
オーバーラップ切替では、
2系受電遮断器を投入→(1系2系同時受電)→1系受電遮断器を開放
と操作し、停電が発生しないようにします。
図3
オーバーラップ切替で1系2系同時受電をしている間は、その分電盤は変圧器1と変圧器2の2台から電源が供給されることになります。つまり、変圧器が並列運転状態になります。
変圧器には並列運転できる条件があり、
・変圧器の定格電圧が等しいこと
・変圧器の周波数が等しいこと
・変圧器の位相が一致していること
・変圧器の短絡インピーダンスが一致していること
が成立することが必要です。これらが成立していない場合、変圧器1と変圧器2の間をぐるぐる流れる循環電流(横流)が流れ非効率になったり、最悪は短絡状態になって事故になる場合があります。
分電盤1の1系側遮断器と2系側遮断器を投入すると1系2系同時受電になり、分電盤1は1系から50%、2系から50%の電力が供給されることになります。
図4
さらに、変圧器2から分電盤1を経由して、分電盤2・3に電流が流れます。
図5
したがって、分電盤1には通常よりも大きな電流が流れるため、この電流によって遮断器が遮断されないことを確認する必要があります。