電流が流れている電線の周囲には図1のように、電流の進行方向を奥に見ると時計回りの磁界が発生します。これを電磁誘導といいます。
図1
図1の磁界と書いてある矢印線を磁力線と呼びます。この電流と磁力線の方向は、アンペア右ねじの法則という関係があります。ねじは右に回すと直進していくことからこの名前が付いています。この磁界が発生する作用を利用したものに、図2のようなコイルがあります。
図2
コイルの電線の各所で発生した磁界は皆同じ方向なので磁界が合成されます。このようなコイルに電流を流すと、磁界の発生により磁石と同じ作用をします。コイルの右側がN極、左側がS極になっています。
図3
図3のようにコイル内に鉄心を入れると、図2のときよりも磁界が集中し、磁力が強くなります。また、コイルの巻き方が密になればなるほど磁力が強くなります。
そして、電流の流れる向きを反対にすると当然ですがN極とS極が反転します。
図3のような物を電磁石と呼びます。この電磁石はモーターやリレーなどさまざまなところに利用されています。
図1や図2で示した磁力線を数量的に表すのに磁束を用います。
磁束とは字のごとく磁気の束の数です。磁束が多ければ多いほど磁力が強いということになります。
強力な磁力を発するコイルを作るには、
@コイルの巻く回数を増やす
A鉄心を入れる
などの方法があります。
この@とAの関係から、コイルがどのくらい磁束を発生させられるかを示すインダクタンスという数値を導く公式があります。
L=Nφ/I
L:インダクタンス[H] N:コイルの巻数 φ:磁束[wb] I:電流[A]
φ=BS=μHS
φ:磁束[wb] B:磁束密度[T] μ:透磁率 H:磁界の強さ[A/m] S:磁路の面積[u]
巻数を増やすとNが大きくなり、インダクタンスが大きくなります。
またコイルに鉄心を入れるとμで表される透磁率が大きくなります。透磁率とは磁束の通りやすさのことですので、透磁率が大きいと磁束が通りやすくなります。
コイルには自己誘導作用という働きがあります。
図1は自己誘導作用の流れを表しています。
図1
@コイルに電池とスイッチを接続します。
Aスイッチを入れると、コイルに電流が流れます。その電流によって、コイルには磁界が発生します。
Bコイルに磁界が発生すると、その磁界の発生を打ち消すように反対方向の磁界を発生させようとします。反対方向の磁界をつくるために電池の起電力と反対方向の誘導起電力を発生し、コイルに誘導電流を流そうとします。
C電池の電流が誘導電流に打ち勝って、電流と磁界が安定します。
Dスイッチを切ると、電流が止まるため磁界も消滅します。すると、今度は磁界の消滅を打ち消すように、もともとあった磁界と同じ方向の磁界を発生させようとします。そのため、電池と同じ方向の誘導起電力を発生し、コイルに誘導電流を流そうとします。しかし、スイッチが切れていて、電流が流れることができないため、スイッチに部分で放電します。
E誘導起電力が消滅し、磁界が消滅します。