フェランチ効果とは、電路のインダクタンスや静電容量の影響で、受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象をいいます。
通常、電線には非常に小さいですが抵抗がありますので、電流を流すと抵抗で電圧が下がります。
よって送電端の方が受電端より電圧が高いのが一般的です。しかし、長距離送電線のようなケーブル亘長が長い系統では、受電端電圧が送電端電圧より高くなる場合があります。
図1
図1は単相電源にモーターを接続し運転している図です。電源とモーターの距離は極めて長いとお考えください。
ケーブルは抵抗とインダクタンスがあります。そして大地との間に対地静電容量があります。
図2
図2はモーター運転中の系統のベクトル図です。モーターの力率は低いので、電流が遅れています。この電流がケーブルを流れていますので、ケーブルの抵抗RとインダクタンスのLに電圧が掛かっています。よって受電端電圧を基準としてベクトル図を描くと図2のようになります。電圧の大きさはベクトルの線の長さになりますので、送電端電圧V1のベクトルの方が受電端電圧V2のベクトルより長いことから送電端電圧の方が受電端電圧より高いことが分かります。
図3
図3はモーター停止中の系統のベクトル図です。モーターは停止していますので、電源→抵抗→インダクタンス→対地静電容量→対地静電容量→インダクタンス→抵抗→電源のルートに電流が流れます。対地静電容量が大きいと、この電流は電圧より進みます。よって受電端電圧を基準としてベクトル図を描くと図3のようになります。電圧の大きさはベクトルの線の長さになりますので、受電端電圧V2のベクトルの方が送電端電圧V1のベクトルより長いことから、受電端電圧の方が送電端電圧より高いことが分かります。
この現象は交流なら単相でも3相でも起こりえます。
もともと電力系統はケーブルと大地との間に静電容量があります。この静電容量も進相コンデンサ同様進み力率にする効果があります。よって軽負荷になると電力系統は進み力率になります。
年末年始やゴールデンウィーク等に電力会社から需要家の進相コンデンサを開放するよう依頼が来ることがあります。これは、休日になると負荷が減って電力系統の力率が進むので、フェランチ効果による異常電圧が発生しないようにするためです。
軽負荷時には、電路に負荷と並列に設置してある分路リアクトルを投入して、力率を遅れさせフェランチ効果を抑制します。