人間は体に電流が流れると、電流の大きさによっては死に至ることもあります。
感知電流が流れるとピリピリと刺激を感じ、不随意電流が流れると運動神経が麻痺、心室細動電流が流れると自律神経が麻痺し死に至ります。15mA以上の電流が人体を流れると非常に危険です。
また漏電電流が数百mA流れると、漏電している付近のものが火災になる可能性もあります。
図1は、洗濯機の内部で、電線の絶縁被覆が何らかの原因によって傷ついて、R相が漏電している図です。
図1
漏電が発生すると、赤い矢印のように漏電電流が流れます。この図の場合、幸い洗濯機にちゃんとアースを接続しているため、アースを流れて変圧器の中性点接地に流れています。
しかし、このままだと誰も漏電していることに気がつきません。すると、洗濯機内部の漏電している場所が、漏電によって熱を持ったり、火花を散らしたりと危険な状態が継続されることになります。
そこで漏電遮断器というものが作られました。
図2
図2は図1の配線用遮断器を漏電遮断器に変更した図です。
漏電遮断器より負荷側で漏電が発生すると、設定に応じた漏電電流・漏電時間によって遮断します。
図3は負荷電流と漏電電流の流れる経路を示しています。
図3
負荷電流を10[A]、漏電電流を5[A]とします。
漏電遮断器は負荷側へ負荷電流10[A]+漏電電流5[A]=15[A]を送っています。しかし負荷側からは負荷電流10[A]しか戻って来ません。
平常時は、負荷側へ送る電流と、戻ってくる電流は一致します
しかし図3の場合は、
15[A]-10[A]=5[A]
となりますので、漏電であるとみなし、漏電遮断器が落ちます。遮断器が漏電や過電流を検知して自動的に遮断することをトリップといいます。
そして、負荷側へ送る電流と、戻ってくる電流の差を零相電流といいます。
漏電遮断器は、零相電流が設定値以下であれば正常、設定値以上であれば漏電発生という判断をしています。
図4は漏電遮断器の内部構造の概要図です。
図4
零相電流検出部で零相電流を測定し、設定値以上になると制御回路がトリップ機構に遮断器引きはずし指令を出してトリップします。
また、漏電が発生してもトリップはせずに警報を出す漏電警報付配線用遮断器というのもあります。これは、漏電が発生し設定値以上の漏電電流が流れると、漏電警報付配線用遮断器についている小さな赤いランプが点灯し、警報信号を出力できるものです。OA機器や重要機器など、電源遮断によって機器が故障する恐れがある場合に用います。漏電が発生しても電源を遮断しないため、技術者が早急に漏電原因を調査する必要があります。