液体が蒸発するときには蒸発熱という熱エネルギーが必要です。たとえば、なべで水を沸かすと、お湯となってやがて沸騰し始めます。そしてお湯が蒸発し始め、水蒸気となります。このとき、ガスレンジの炎の熱エネルギーをお湯が奪っています。
水は1気圧では100℃で蒸発します。しかしエアコンで使われているフロンガスは-30℃で蒸発します。
スポーツをしていて打撲をしたときに使用するコールドスプレーというものがあります。コールドスプレーには液化した状態の高圧ガスが充填されていて、缶内では大気圧以上の圧力がかかっていて、蒸発できない状態になっています。液体の高圧ガスがスプレーから噴射されると、缶内より圧力が低い大気中に飛び出すため一気に蒸発します。このとき液体の高圧ガスは周囲から蒸発するための熱を奪って蒸発します。コールドスプレーはこの作用を利用して患部を冷やしています。
ガスは大気中に噴射されると、回収することはできません。これをパイプの中でガスを蒸発させ、パイプを冷やすことにようにしたものがエアコンです。
図1は冷房状態のエアコンの配管図です。
図1
エアコンは室内機、室外機、圧縮機、キャピラリチューブ、四方弁で構成されています。そして配管の中にはフロンガスが充填されています。エアコンは電気を使って圧縮機やファンを運転しています。
圧縮機で圧縮されたフロンガスは四方弁を通って室外機に向かいます。ここではフロンガスが高温高圧の状態です。室外機では室外ファンの風によって冷やされ、フロンガスが低温高圧の状態になります。そしてキャピラリチューブの配管抵抗によって低温低圧のフロンガスとなり、蒸発しやすくなります。そのフロンガスが室内機で室内ファンの風から熱を奪って蒸発し、高温低圧の状態で四方弁を通って圧縮機に戻ります。
つまり、冷房状態のエアコンは、室内の熱を奪い、室外に吐き出して冷房しているということになります。
図2は、暖房状態のエアコンの配管図です。
図2
エアコンの冷暖切り替えは四方弁という切り替え弁で行います。四方弁が切り替わるとフロンガスの流れが逆転し、高温高圧のフロンガスを冷却していた室外機と、室内の熱を奪っていた室内機の立場が逆転します。つまり、暖房状態のエアコンは、室外の熱を奪い、室内に取り入れて暖房しているということになります。
電気ヒーターも電気を使って暖房しています。
1kWh=3600kJですので、電気ヒーターは効率を100%とすると、1kWhの電力を使用して3600kJの暖房をします。
しかしエアコンは1kWhの電力を使用して、15000kJ〜25000kJの暖房をすることが可能です。
電気ヒーターは電気を熱に変換していますが、エアコンは熱を電気で室内機から室外機、室外機から室内機へ移動・運搬しているため、1kWh=3600kJ以上の冷暖房をすることが可能なのです。この熱の移動・運搬を「ヒートポンプ」(熱のポンプ)といいます。
この移動した熱エネルギー量を、移動させるのに使用した電気エネルギー量で割ったものを成績係数(=COP)といいます。
成績係数=冷暖房エネルギー量/入力電力量
最近の市販されているエアコンではこの成績係数が4〜7となっています。この数値が大きいほど省エネ型エアコンということになります。