総合技術監理部門は、「技術士としての実務経験のような高度かつ十分な実務経験を通じて修得される照査能力等に加えて、業務全体を俯瞰し、業務の効率性、安全確保、リスク低減、品質確保、外部環境への影響管理、組織管理等に関する総合的な分析、評価を行い、これに基づく最適な企画、計画、設計、実施、進捗管理、維持管理等を行う能力とともに、万一の事故等が発生した場合に拡大防止、迅速な処理に係る能力が必要である。(平成12年9月26日技術士審議会一般部会)」として設置された部門で、他の20部門とは違い特定の技術を対象としていません。
総合技術監理部門をよく表しているものが経済性管理、人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理からなる「5つの管理」です。この「5つの管理」の詳細は、青本と呼ばれる日本技術士会が発行する「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系(第2版)」に記載されています。青本の目次は、下記の通りです。
1. 総合技術監理の要求内容と技術体系
2. 経済性管理
3. 人的資源管理
4. 情報管理
5. 安全管理
6. 社会環境管理
7. 総合技術監理と国際動向
この中で2〜6が「5つの管理」になります。「5つの管理」の内容は下記の通りです。
2. 経済性管理
2.1 事業企画と事業計画
2.2 品質管理
2.3 工程管理
2.4 原価管理(コスト管理)
2.5 設備管理
2.6 計画・管理の数理的手法
3. 人的資源管理
3.1 人の行動と組織
3.2 労働関係法と労務管理
3.3 人的資源計画
3.4 人的資源開発
4. 情報管理
4.1 通常業務における情報管理
4.2 緊急時の情報管理
4.3 ネットワーク社会における情報管理
4.4 情報ネットワーク
4.5 情報セキュリティ
5. 安全管理
5.1 リスク管理
5.2 労働安全衛生管理
5.3 未然防止活動・技術
5.4 危機管理
5.5 システム安全工学手法
6. 社会環境管理
6.1 環境と社会システム
6.2 環境関連法と制度
6.3 環境経済評価
6.4 環境アセスメント
6.5 ライフサイクル・アセスメント
6.6 組織の環境管理活動と環境アカウンタビリティ
「5つの管理」は、組織活動やプロジェクトに応じてどの管理を優先するか異なります。コストを抑えることが求められる場合は経済性管理を、労務管理や教育が求められる場合は人的資源管理を、タイムリーな情報伝達が求められる場合は情報管理を、危険性が高い場合は安全管理を、省エネや廃棄物対策など環境対策が重視される場合は社会環境管理を優先することになります。このように各管理に優先順位を付け監理することが総合技術監理であり、管理職や監督者の業務に近いと言えます。