ある系において、現在加えられている力だけではなく、過去に加えられていた力が残留して変化することをヒステリシスといいます。
磁性体に外部から磁界をかけて磁化するとき、磁界の強さと磁束の関係はヒステリシス曲線というループを描きます。
図1のような鉄心が入ったコイルに交流電流を流した場合を考えます。
図1
交流電流i[A]を流すと鉄心の中に磁界ができます。この磁界の強さH[A/m]は、コイルの巻数をN[巻]とすると
H=NI
で求められます。
この磁界によりコイルの中に磁束が発生します。その磁束の磁束密度Bと磁界の強さHの関係をグラフに表したものが図2です。
図2
磁界の強さHは交流電流iの瞬時値に比例するため、横軸は交流電流iの瞬時値とみなすことができます。
交流電流iの瞬時値が0から徐々に上がっていくと、磁束密度Bも増えていきます。ある点を過ぎると磁束密度Bの変化が少なくなります。これは鉄心内の磁束が満杯になり、磁束が飽和していくためです。したがって、大きな電流を流しても磁束密度Bは一定値以上には大きくならないということになります。これを磁気飽和といい、その時の磁束密度を飽和磁束密度といいます。
交流電流iが最大値に達したあと徐々に減少してくると、それに比例して磁界の強さHも減少していきます。交流電流iが0になったとき、磁界の強さHも0になりますが、磁束密度Bは0にならずBrの値になります。これは交流電流iが0になり磁界の強さHが0になっても鉄心に磁気が残っていることを表してします。この残っている磁気の磁束密度Brを残留磁束密度といいます。
交流電流iがマイナスになると磁界の強さHもマイナスになり、磁束密度Bが残留磁束密度Brから小さくなっていきます。そして磁界の強さが-Hcになると磁束密度Bが0になります。この磁束密度Bが0になる磁界の強さ-Hcを保持力といいます。つまり、鉄心は一度磁化すると磁界の強さHが0になっても残留磁束密度Brが残り、反対方向の磁界を加えることによって磁束密度Bが0になるということになります。