水力発電所はダムから水が落ちる際に水車を回して発電します。高いところにある河川や貯水池の水が持つ位置エネルギーを発電に利用します。
動きのない水の水中のある点から水面までの高さを水頭といいます。水頭は高さですので単位は[m]です。水頭h[m]が持つエネルギーは、水1[kg]あたりh[kg・m]となります。
流水は位置エネルギー・運動エネルギー・圧力エネルギーを持っています。この3つのエネルギーはすべて位置エネルギーに換算することができます。
水車はエネルギーの変換方法から、衝動水車と反動水車に分類されます。
衝動水車は、水の落差による圧力水頭を速度水頭に変えてその流水を水車のランナに作用させ、水車を回転させます。衝動水車にはペルトン水車があります。
反動水車は、水の落差による圧力水頭を持つ流水がランナに流入し流出するときの反動力を水車のランナに作用させ、水車を回転させます。反動水車にはフランシス水車・カプラン水車・斜流水車などがあります。
発電機の回転子には周囲に磁界を発生するための励磁電流を流します。通常、直流で励磁しますが、回転子の回転速度が変化しても系統周波数と回転子回転速度の差である滑り周波数で励磁することにより固定子に商用周波数の電圧を発生させることができます。そのため励磁装置にはインバータなどの周波数変換励磁装置が設置されます。
可変速揚水発電に用いられる水車は、ポンプとして揚水することができるため、夜間電力を使用して下部貯水池から上部貯水池に水を揚水します。日中の重負荷時には、上部貯水池から下部貯水池への流水によって水車を回転させ発電します。
可変速揚水発電のメリットは、
1.揚水運転時・発電運転時の入力・出力電力が調整できる。
2.発電運転時の回転速度を、落差に応じて高効率の速度に設定できる。
3.水車入出力に関係なく電力入出力調整ができる。
等があります。
可変速揚水発電は電力系統の自動周波数調整(AFC)に大きく寄与します。特に夜間は原子力発電が主になっており、原子力発電は出力調整が難しいことから、可変速揚水発電は夜間の電力系統の需給バランスを調整する効果が最大のメリットになります。
水力発電は、他の発電と比べ構造が単純で、高温部分がないので故障や補修の頻度が少ないです。
また、起動停止や出力の増減を短時間で行うことができます。そのため、負荷の急変やピークなどに活用されています。
水力発電所は、火力や原子力のように燃料を必要とせず、固定費のみで運転でき、耐用年数が長い発電です。