乾電池と豆電球を電線でつなぐと、豆電球が光ります。これは乾電池から豆電球に電気が流れるからです。水で考えれば、電線はホースのようなもので、電気が流れやすい銅の細い線の束に、電気が流れにくいビニールのカバーをかけています。
銅のように電気が流れやすい物質を導体、ビニールのように電気が流れにくい物質を不導体または絶縁体といいます。したがって、電線は導体(銅)を不導体(ビニール)で包むことで、電線の中に電気を流して、電線の外には電気が流れていかないようにしています。このように導体を包む不導体のことを絶縁被覆といいます。
導体には、銅・鉄・アルミニウムなどの金属があり、不導体にはビニル・ゴム・ガラスなどがあります。
電流は、昔「電液」と呼ばれていました。昔の人は電気の液が流れていると考え電液と呼んだのでしょう。
実際は、電流は自由電子の流れです。自由電子はそれぞれが自由にバラバラの方向に動き回りますが、これを一方向に動かすと電流になります。水で考えれば水流に置き換えることができます。
電流が大きいと、たくさんの自由電子が流れていることになります。
電流の大きさを数値で表すときの単位はアンペア[A]を用います。
銅の分子は、銅(Cu)の原子1つだけで構成されており、その分子が集まって銅を構成しています。銅の他にも、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)など金属の分子は1種類の原子で構成されており、原子が規則的に整列しています。
金属は通常、電気的にプラスでもマイナスでもない中性の状態です。しかし、金属の原子は、原子核からもっとも遠い球殻に配置される電子である価電子の数が少ないため、その価電子を原子から放出してもうひとつ内側の球殻を最外殻とすることで価電子数を多くして、安定を求める性質があります。原子から放出された電子は、金属の中を自由に動き回ります。このように、自由に動いている電子を自由電子といいます。
電子を放出した原子は、電子の数より陽子の数が多くなるため+イオンになり、その+イオンの周りを電子が自由に飛びまわっています。金属は、+イオンと電子が引き付けあい、電子が接着剤のように+イオン同士をつなぎ合わせているような状態になっていて、これを金属結合といいます。
電気が流れにくい不導体は、原子核と電子が強く結び付いていて、電子が原子核から離れにくくなっているため、電気を流しにくい性質となります。このような状態の電子を束縛電子といいます。
電流とは正電荷の流れのことを指します。
電子の流れる方向を電流の方向とすればシンプルだったのですが、「正電荷の流れる方向が電流の方向である」と定義した後に電子が負電荷であることが分かったため、電流の方向と電子の流れる方向は逆になってしまいました。原子の中にある陽子が持っている正電荷は、電池の電解液等の中では流れることができますが、電線の中では流れることはできません。しかし、電子の流れと反対に正電荷が流れていると考えても電気的には同じことになります。通常の電気の計算や実務上は、正電荷が+から−に向かって流れているとして、それに基づき電気の公式や法則が作られています。
図1
電流は単位時間当たりに流れる電荷の量を表し、
電流[A]=電荷[C]/単位時間[秒]
で求められます。
したがって1秒間に1[C]の電荷が流れると1[A]になります。
一方、陽子1個の電荷は1.602×10-19[C]、電子1個の電荷は-1.602×10-19[C]
となります。
よって1[A]流れると、
1[A]=1[C]/1[秒]
1[C]=1/1.602×10-19=6.24×1018
となり、
1秒間に6.24×1018個(6,240,000,000,000,000,000=624京)の電子が電流の流れとは反対向きに流れていることになります。
正電荷は原子の中にある陽子が持っています。そのため、正電荷が電子のように原子から離れて電線の中を流れることは実際にはありません。しかし、−から+に向かって−の電気である負電荷が流れているというのは、+から−に向かって+の電気である正電荷が流れているというのと、電気的には同じことだからです。 通常の電気の計算や実務上は、正電荷が+から−に向かって流れているという意識で問題ありません。
電流が流れているとき、電子はどのくらいの速さで流れているのでしょうか。実は電子が流れる速さは非常にゆっくりです。
例えば、断面積1[mu]の銅の電線に1[A]の電流が流れているとき、電子の流れる速さは約0.1[mm/秒]になります。約0.1[mm/秒]というのは、10秒で1[mm]、1分経ってやっと6[mm]進むという速度なので、かなりゆっくりしたスピードです。
このスピードでは、乾電池と豆電球を電線でつないでも、すぐに点灯しないのではないかと思うかも知れません。空っぽのホースを蛇口につないで、蛇口を開けてもすぐにホースの先から水が出ないのと同じと想像するからでしょう。
ところが、乾電池と豆電球を電線で接続すると、豆電球はすぐに点灯します。電線は水が入っている状態のホースと同じで、もともと電線の中には銅の原子が持っている電子があります。電線に乾電池を接続すると、電界という電子を動かす力が電線の中に伝わります。電界は電線の中を光速で伝わるので、電線の中の電子はほぼ一斉に動き始めます。したがって、豆電球は乾電池から出た電子が到着するのを待って点灯するのではなく、電線中の電子が動き始めるとすぐに豆電球に到着し、豆電球が点灯することになります。
電流は、ぐるっと1周流れることができるルートがないと流れることはできません。このぐるっと1周できるルートを回路といいます。
また、回路の途中に分岐や合流がなければ、電流は増減することはありません。豆電球が光ると、豆電球で電流が消費されるような誤解をしやすいですが、電流は電気エネルギーを豆電球に運搬しただけで、電流自体が消費されることはありません。このような電流の特徴も水流とよく似ています。