変圧器の2次側の接地方式の違いで地絡事故時の様相は大きく異なります。
図1
図1は、2次側の1端子が接地されている3相変圧器の2次側の機器が完全地絡した場合の図です。
変圧器2次側はデルタ巻線のため中性点を取れず、1端子を接地しています。Reは接地抵抗です。また、その接地線に地絡継電器を設置し地絡監視をしています。変圧器2次側の電路と対地との間には見えないコンデンサである対地静電容量Ceが存在します。
変圧器の2次側が直接接地である場合、負荷側で絶縁不良が発生すると比較的大きな漏洩電流が流れます。この漏洩電流は、絶縁不良となった箇所から大地へ流れ、大部分が変圧器2次側のB種接地を通じて変圧器2次側1端子に戻り、一部は対地静電容量Ceに流れます。そのため直接接地系統の漏洩電流値は、絶縁不良となった箇所と大地との間の地絡抵抗値と、変圧器の2次側の直接接地の接地抵抗値に大きく左右されます。
図2
図2は、2次側が接地されていない3相変圧器の2次側の機器が完全地絡した場合の図です。変圧器の2次側が300Vを超える場合は、変圧器を混色防止板付きとすれば2次側を非接地にできるため、2次側が400Vデルタ結線の変圧器などがこれにあたります。
変圧器の2次側が非接地である場合、負荷側で絶縁不良が発生しても変圧器の2次側が接地されていませんので、漏洩電流は絶縁不良となった箇所から大地へ流れ、大地と電路との間の対地静電容量Ceを通じて変圧器に戻ります。そのため非接地系の漏洩電流値は、絶縁不良となった箇所と大地との間の地絡抵抗値と、変圧器の2次側電路の対地静電容量による容量性インピーダンス値に大きく左右されます。
図2の対地静電容量Ceによる容量性インピーダンスXcは、周波数をf、変圧器の2次側電路と大地の静電容量をCとすると、
Xc=1/2πfC
で求められます。静電容量Cが大きくなれば容量性インピーダンスXcは小さくなります。
また、静電容量Cは、誘電率をε、導体面積をS、導体間隔をdとすると、
C=εS/d
で求められます。
よって容量性インピーダンスXは電路の亘長と大地との距離によって決まり、電路布設環境が同じであれば電路の亘長が長いほど容量性インピーダンスXcが小さくなり、漏洩電流が大きくなります。逆に電路の亘長が短いほど容量性インピーダンスXcが大きくなり、漏洩電流が大きくなります。
送電線等は、電路の亘長が著しく長いため、対地静電容量は大きくなりますが、需要家の変圧器2次側の電路は亘長が比較的短いため、Ceの値は小さくなり容量性インピーダンスXcは大きくなります。
そのため非接地系統の負荷で絶縁不良が発生しても、漏洩電流が小さく、零相電流で絶縁不良を検出する漏電遮断器(ELB)や地絡継電器(GR)を動作させることができません。
その対策として接地用補償コンデンサを設置します。
図3
図3は、図2の系統に補償コンデンサを設置した図です。
変圧器2次側の1端子と大地を、補償コンデンサCを介して接地します。補償コンデンサCは対地静電容量Ceより著しく大きい静電容量を持っています。この補償コンデンサを対地静電容量と並列に電路に接続すると変圧器2次側の対地静電容量を増大させますので、容量性インピーダンスを小さくする効果があり、零相電流での地絡検出を可能にします。